開発者インタビュー

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ウイルス対策が大きな社会問題になり、その存在感が日増しに高まっているEtak®。
生みの親の広島大学教授二川浩樹先生に、Etak®開発の経緯と思いについて伺いました。

「お医者さんになってお姉ちゃんの病気を治したい」幼き日の誓いがEtak®の原点

二川教授が医学の道に進まれたきっかけを教えてください。

二川教授「私の姉は、生まれつき『骨形成不全症』という、骨をうまく作ることができない病気を持っていました。骨が弱いために自分で歩くことができず、いつも車椅子に乗っていました。私は幼稚園の頃から、『大人になったら医者になって、お姉ちゃんの病気を治したい』と思っていました。

骨形成不全症の人は、虫歯になりやすい傾向があります。姉もひどい虫歯でした。治療しようとしても歯が弱く、削ろうとするとボロボロ崩れるので、思うように治すことができませんでした。

私が高校2年生の時、我が家の隣に広島大学病院で歯科医をされているご夫婦が引っ越して来られました。そのご夫婦が、『お姉ちゃんの歯を大学病院で診てあげよう』と、姉の主治医になってくれたんです。

その先生は海外の症例なども調べて、ついに姉の歯を治してくれました。すると姉の性格がすごく明るくなったんです。『こんなに人って変われるのか』と驚きました。 その時、姉の歯を治してくれた先生から、『歯学部に来ないか?』と勧められました。当時、私は医学部に進むつもりだったので、『人をこんなに明るく元気にできる分野もいいな』と思い、歯科補綴学の道に進みました。

「障がい者の歯を虫歯から守りたい」という切実な思い

Etak®を開発しようと思われたきっかけを教えてください。

二川教授「私は、広島大学と大学院を卒業した後も、大学に残って臨床をしながら研究を続けました。並行して、障がい者支援施設に出張して利用者の歯の治療を行っていました。施設にはかつての姉のように、虫歯を持つ利用者がたくさんおられました。困ったことに、大学病院で治療すると10年から15年はもつ治療箇所が、障がい者支援施設の利用者は治療しても2、3年経つと、また虫歯になってしまうんです。障がいを持つ方の多くは十分な歯磨きができないので、虫歯になりやすいんですね。そんな患者さんたちを目の当たりにし、『俺は歯学や微生物の研究をしているのに、患者さんのために何もできないのか? なんでこんなに無力なんだ…』という切実な思いを抱くようになりました。

口の中のバイ菌は増えるスピードは非常に早く、1時間ごとに倍々で増えます。1個のバイ菌が1時間後には2個に増えます。6時間後ならまだ64個なのですが、10時間経つと1000個、12時間で4000個になるんです。このようにものすごいスピードで増えていきますので、例えばマウスウォッシュで一時的に菌を減らしても、歯を虫歯から守ることはできないのです。そこで、『患者さんたちのために、口の中で持続的に虫歯菌と戦えるものを作ろう』と考えました。私は大学院時代から専門の歯科補綴学と並行して、生化学の教室で『微生物の付着機構』の研究をしていまして、『どういう表面処理をすると、どの微生物がくっつきやすくなるのか?』 という、有機化学の研究をしていました。この経験がありましたので、『シラン化合物に抗菌剤をくっつければ、歯の表面を抗菌化できるのではないか?』と考え、2007年に構造式をデザインしました。それがEtak®の原点です。

その構造式から、Etak®がどのように製品化されていったのですか?

二川教授「以前、学内に広島大学の知財を企業に紹介する組織があったのですが、そこを通じてマナックさんを紹介していただきました。竹田宏紀さんという若い担当者が来られました。彼に、Etakの構造式を見せて、『これを合成して欲しいんだけど、どう思う?』と聞きました。すると、すごくキラキラした目で、『ぜひ、やってみたいです!』と言ってくれました。

それから、マナックさんで合成したものを、私の方で抗菌性や安定性をチェックし、また合成する、ということを繰り返しました。その間、様々な問題が生じました。合成することは簡単なのですが、安定性がなかったり、不純物が生じたり、暖かい時期は問題ないのですが、寒い時期になると沈殿物が多くできたり。そういった問題をクリアして、完成するまで3年かかりました。

2009年より大きな転機を迎える

二川教授「2009年4月から、世界的にウイルス対策が求められ始めました。この時、私は、『そういえばEtak®の抗菌部分は口内の抗菌に使っている四級アンモニウム塩だから、エンベロープ・ウイルスに対応できるはずだ。』と考えました。それで、ウイルス学の坂口剛正先生に、Etakの液性のものと、瓶に固定化したものをお渡しし、抗ウイルス試験をお願いしてみたんです。すると、とても高い効果が出て、坂口先生も驚かれていました。それで2009年9月に商品化し、広島大学広報を通じて記者発表を行いました。すると、様々な企業から引き合いがありました。

たくさんの人の健康を守るために

今後、マナックへ期待されることを教えてください。

二川教授「今後は、ぜひEtak®の医薬品化に取り組んでいただきたいですね。ただ、医薬品の認可を取ることは大変難しいことです。原材料を扱っている会社も、合成しているメーカーも、厚生労働省の基準を満たすために、厳しい基準をクリアする必要があります。多額の設備投資が必要となるかもしれません。また、医薬品基準の安全性試験を行うためには、巨額の費用がかかります。さらに、医薬品の認可を取ったからといって、今以上の売上が確約されるわけでもありません。しかし、医薬品となって、今よりもワンステップ上のEtakになって、たくさんの人の健康を守るために、いろんな製品に応用してもらいたいですね。」

【開発者プロフィール】

二川浩樹(にかわ・ひろき)

広島大学大学院医系科学研究科 教授
歯科医師 歯学博士 日本歯科補綴学会専門医・指導医

1986年 広島大学歯学部卒業、同大学大学院入学
1990年 歯学研究科修了、歯学博士
2005年 広島大学歯学部教授
2012〜2016年 広島大学歯学部副学部長
2013年 文部科学大臣表彰
科学技術賞受賞
2016〜2018年 医歯薬保健学研究科副研究科長

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